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秀吉と武吉(ひでよしとたけよし)

 「村上武吉(たけよし)という男がいた。豊臣秀吉と同時代に生き、秀吉よりちょうど十歳年長である。瀬戸内海賊の総大将。因島、能島、来島のいわゆる三島村上水軍を束ねる総領家能島村上の中で、瀬戸内海の制海権をにぎり、一時は西日本の動向を左右しかねぬ力があった」
 この武吉が30歳の時、厳島合戦が起きた。武吉が毛利方に加勢したことにより陶晴方二万の大軍が毛利の3,500の軍勢に敗れた経緯はどの歴史書にも詳しい。
 この作品の前半は、能島と竹原の鎮海山に居を構える武吉の視座から毛利の覇権の状況をリアルに分析する。郷土の地名が次々と登場する親しみとは別に、毛利の動向をまるで経済小説を読むような筆致でたどり読者を飽かせない。
 後半は秀吉の力に押されて水軍が斜陽化する経緯に至る。武吉は能島から竹原へ、さらに長府などへ追いやられ、瀬戸内海地域が豊臣政権の支配下に収められる。関ヶ原合戦は武吉にとって挽歌となった。
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