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千光寺本堂
(せんこうじほんどう)
千光寺は、尾道駅の北側、高さ137メートルの千光寺山の中腹の崖(がけ)にへばりついて建っているような寺である。一帯は、眼下に市街と尾道水道と瀬戸内海の島々を見晴らす絶好の展望場所になっており、麓(ふもと)からロープウェーで昇れるようになっている。
本堂は丹(に)塗りになっており、「赤堂」と呼ばれ土地の人々に親しまれている。寺蔵の棟札に、貞享(じょうきょう)3年(1686)に施主藤田勝長が造営したとあり、建物の前方二間を舞台造りとして断崖(がい)の上に張り出している様式は、この地方では珍しい。堂の規模は方三間で、屋根は入母屋造りで本瓦葺きである。堂内には須弥壇(しゅみだん)があり、この須弥壇は和様と禅宗様を交えた様式となっており、4周した勾欄(こうらん)には美しい曲線の蕨手(わらびで)を用い、勾欄親柱の2重蓮華(れんげ)の上に宝珠をおいており、制作は室町時代のものと思われる。本堂の本尊は十一面千手観音である。
なお、千光寺には、巨岩玉(たま)の岩(いわ)をはさんで鐘楼が建っており、除夜の鐘で有名である。赤堂とともに尾道の風光のシンボル的な存在となっている。また、境内にある梵字(ぼんじ)岩は、ノミの跡も鮮やかで石の町尾道の名工の技をみせており、近くには、この地を訪れた文人墨客の詩歌や小説の断章を自然石に刻みこんでおり、これらを巡る道を「文学のこみち」と名付けている。
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