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上根峠
(かみねとうげ)
中国山地では、夏から秋にかけての早朝、深い霧が発生しすべてを包み込んでしまうが、その霧もこの上根峠を下ると、まるで嘘のように消えてしまう。この峠は、中国山地を横切り日本海に至る簸川(ひのかわ)(江の川の支流)と、峠の麓から南に流れ瀬戸内海に注ぐ根之谷川(太田川の支流)の分水嶺に位置している。
太古に根之谷川と簸川との河川争奪によってできたというこの峠は、登り坂が急峻(きゅうしゅん)で、南方(広島側)の谷から峠の頂上までの比高は約80メートルに及ぶ。そのような難所であるため、中世には吉田による毛利氏の南の防御線となっていた。この峠道を本格的な道として整備を始めたのは福島氏、さらには浅野氏の時代になってからである。道幅も7尺(約2.1メートル)の脇往還として、峠の頂には一里塚も設けられるなど整備されたが、峠道の途中に建つ馬頭観音が語るように、相変わらずの難所であることには変わりなかったようである。
明治時代以後、道幅を広げ、石畳も敷かれるなどの整備が続けられ、国道54号の上根峠として見られるようになったのであるが、今は上根バイパスの橋梁やトンネルが走っている。
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