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磨崖和霊石地蔵
(まがいわれいしじぞう)
三原市佐木島向田野浦の波打際にある高さ約2.7メートル、幅約4.7メートルの巨岩に半肉彫(はんにくぼ)りされた地蔵菩薩坐像(ぼさつざぞう)である。右手に錫杖を持ち、左手に宝珠(ほうしゅ)をのせる。満潮時には、像の肩のあたりまで海中に没する。
左右の花瓶(けびょう)に刻まれていた銘文(めいぶん)は、風雨にさらされて判読できなくなっているが、他の石碑に移刻されたものから、主旨を要約すると、東西南北各1町を未来にわたり殺生禁断(せっしょうきんだん)とした。造立は釈尊円寂(しゃくそんえんじゃく)2251年にあたる正安(しょうあん)2年(1300)に、散位平朝臣茂盛(しげもり)が大願主となり幹縁道俗(かんえんどうぞく)70余人を集めて行った。仏師は念心(ねんしん)である。
近世に伊予宇和島(愛媛県)の和霊(われい)神社の信仰の影響を受けて、当像を和霊石(割石)地蔵と呼ぶようになったとされる。
瀬戸内海の岬の地蔵の中では最も古く、地蔵信仰の海への広がりがうかがわれる。芸備地方の在銘石造物の中でも古い部分に属する。また美術的にみても、彫法は密で秀麗な姿の像である。以後内海各所で造られる地蔵像の原型といっても過言ではないと思われる。
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