人々の生活の中で生まれ、語り伝えられてきた民話。 広島県にも、自然・歴史・信仰生活などを題材とした数多くの民話が口承されてきました。 ここでは、広島県を県西部、県東部、県北部、瀬戸内海島嶼部の4つの地域に分け、それぞれの土地の気候・風土・歴史などによってつくりあげられてきた民話の特色をご紹介します。
広島県西部は、安芸門徒の名で知られる真宗信仰の厚い地方です。 真宗信仰のさかんなところには民話が残っていないと言われますが、決してそのようなことはなく、数多くの民話が語り継がれてきました。 特に、この地方にはきつねが活躍する話が多く、中でも「おさん狐」の話は広く口承され、日本を代表する民話の一つになっています。 また、「猿猴・河童」など伝説上の生き物に関する話も多く、広島市には「猿猴川・猿猴橋町」といった地名が残っています。
県東部は、質的にも、量的にも民話の豊富な地方と言えます。 中でも、「八ツ尾城埋蔵金」に関する話などが有名です。 また、この地方には、瀬戸内海屈指の要港として賑った尾道や鞆の浦が立地し、それぞれに由緒ある寺社を有するため、不思議な縁起話や因果話などが語り伝えられています。
県北の山間部は、古くから鉄の産地として知られています。 鉄の製造には大量の木炭を必要とするため、山から大量の木が伐採されて洪水の原因となっていました。 このため、大洪水を大蛇にもじった話など、蛇にまつわる種々の民話が伝承されてきました。 また、この地方は日本有数の牛の生産地であるため、牛にまつわる話が多いことも特色です
瀬戸内海は、京と北九州を結ぶ海の交通の要所であったため、菅公の西遷や平家滅亡、水軍の活躍など、日本の歴史上に残る数々の出来事が瀬戸内海を舞台に繰り広げられました。 そのため、平家哀話や水軍伝説など、歴史にまつわる民話が数多く語り伝えられています。
- 浄土寺十一面観音菩薩霊験記(尾道市)
- 承天寺の古狸と十六羅漢の画像(福山市)
- 八ツ尾城埋蔵金の謎(府中市)
- 塞の峠のお地蔵さん(竹原市)
- 中野の出雲石(三原市)
- 西神崎観音像(世羅町)
- 亀の恩がえし(三次市)
注)
1. | 民話の範囲を広義にとらえ、伝説等も含めています。 |
2. | 広島県内の23市町より、各1話ずつご紹介しています。 |
3. | 一部に、現代における人権尊重の考え方にそぐわない記述を含む場合もありますが、昔の人々の生活や心情を忠実に伝えるため、極力原本どおりに掲載しています(一部、漢字等の間違いについては修正) |