広島県の代表的なきのこといえばやはりマツタケであろう。その生産量は全国で常に1~2位である。その生産基盤であるアカマツ林も全国一広いが、最近はそのアカマツ林もマツ枯れなどで減少し、アカマツ林の環境悪化と相まってマツタケの生産量も最盛期の5%以下になっている。
県中南部のアカマツ林に発生する種類は多い。アミタケ(方言名:かのこ)(写真1)、ヌメリイグチ、クロカワ(方言名:くろっこう)、シロシメジ、シモコシ(方言名:おこん)、トキイロラッパタケ、ニンギョウタケ(方言名:おかんすけ)、ショウゲンジ(方言名:こむそう)、ホウキタケ(方言名:ねずみたけ)、ハツタケなどが食用きのこである。
県北では広葉樹林が多く見られ、マイタケ(写真2)、コウタケ(写真3)、ホンシメジ(方言名:おおはぎ)、シャカシメジ(方言名:こはぎ)、サクラシメジ(方言名:たにわたり、あかなば)(写真4)、クリフウセンタケ(方言名:しばかずき、このはかずき)(写真5)、ヤマドリタケモドキ(欧米で人気の高いポルチーニの一種)、ウラベニホテイシメジ(方言名:いっぽんはぎ)、タマゴタケ(写真6)など、食用が多い。ブナの枯幹に大量に発生するツキヨタケ(毒)(写真7)(ひだが発光するきのこ)は、シイタケと似ているので間違えて食べられ、中毒するケースがある。気をつけていただきたい。真っ赤で硬いカエンタケ(毒)は他県で死亡例もあり、また、クサウラベニタケ(毒)はホンシメジと似ているので時々間違えられることがあるが、注意が必要である。
その他、モミ林には大型で食用のモミタケが発生する。また、カラマツ林にはハナイグチ、シロヌメリイグチ(いずれも食用)が発生する。さらに、畑地、庭、道端などに最近多く見られるようになったのがハタケシメジ(写真8)で、人工栽培されるくらい美味なきのこである。
写真1 アミタケ | 写真2 マイタケ | 写真3 コウタケ |
写真4 サクラシメジ | 写真5 クリフウセンタケ | 写真6 タマゴタケ |
写真7 ツキヨタケ | 写真8 ハタケシメジ |
珍しい種類としては、トリュフの一種であるイボセイヨウショウロ(写真9)が県北で見つかっている。また、シイ林に発生するアキノアシナガイグチ(写真10)は広島県で最初に見つかったので“安芸の”という地名が入っている。胞子が星型のホシミノヌメリガサ(仮称)も見つかっている。
写真9 イボセイヨウショウロ | 写真10 アキノアシナガイグチ |
冬虫夏草(とうちゅうかそう)※注も、クモタケ、ヤンマタケ、サナギタケ、ハナサナギタケ、ハチタケ、オオゼミタケ、カメムシタケ、ヌメリタンポタケ(写真11)(ツチダンゴというきのこに寄生するきのこ)などの種類が見られる。
きのこが発生する季節は秋だけではない。探せば年中あるもので、冬はエノキタケ(写真12)(栽培品と色も形も違う)、ヒラタケが発生し、春にはアミガサタケ(写真13)(フランス料理でモレルとして使われる)、ハルシメジ(梅の木などバラ科植物の根元に発生する)、夏もヤマドリタケモドキ、アカヤマドリ、チチタケ、オオオニテングタケなど梅雨明けごろに多くの種類が発生する。
この他、腹菌類という形の変わった種類も多い。ウスキキヌガサタケ(写真14)(国の絶滅危惧種になっている)、ツチグリ、オニフスベ、カゴタケ、アカヒトデタケ、スッポンタケ等多くの種類が見られる。ツチグリに寄生するタマノリイグチも見られる。
中華料理に使われるキクラゲ、アラゲキクラゲや、その仲間であるタマキクラゲ、サカズキキクラゲ、ハナビラニカワタケ、シロキクラゲなども見られる。
写真11 ヌメリタンポタケ | 写真12 エノキタケ | 写真13 アミガサタケ |
写真14 ウスキキヌガサタケ |
注)冬虫夏草: | 土中の昆虫の幼虫・蜘蛛などに寄生し、その体から子実体を生ずる菌類。寄生された虫は冬は生きているが、後に寄生菌が虫を殺し、初夏頃から棒状その他の子実体を形成するのが名の由来。 |