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備後筒描き
(びんごつつがき)
筒描きは紙筒に入れた糊を布地に押し出しながら紋様を描き、これを染料で染め、糊置きした部分が染まらないで白く残ったところに他の染料で色をさして作るのであるが、プリント染めに押されて、手描きの筒描きをする職人はいなくなってしまった。
福山藩では古く綿の栽培が干拓地で行われ木綿を産出したので、染物屋も発達し、風呂敷、布団地、着物、それに祭礼用の幡(はた)・幕、そして漁民の大漁祝いの晴れの衣装、小袖の類が染められている。しかし現在では大企業の染色工場に仕事は移り、手染めの筒描きを行っているのは福山市内でも草戸町新町の皿谷豊重氏夫妻だけという淋しさ。わずかに5月の武者絵のぼり、神楽幕、大漁旗、風呂敷などが手描き染めされている。
江戸時代から大正時代まで広島県内各地で染められた筒描きは、久しく長持ちや箪笥(たんす)の底に埋もれていたが、その民芸的な美しさが認識されて、民芸館や民俗資料館に展観されている。しかし、まだまだ多くの備後筒描きが眠っていることであろう。この伝統的な民芸染めの復興を望みたい。
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