歌集 帝釈の溪（かしゅう たいしゃくのけい）
| 落ちたまる木の葉のすべり危きにこごしき岩根踏み下るなり 岩角をしかとつかみて見下ろせば溪の底ひにたぎつ瀬の見ゆ 渓に入る湿りの道に散らばりて早き落葉の明るかりけり 幾百尺聳えつらなる断崖のま底に立ちてわれの小ささ 深々と湛えし湖に燃え映えて揺らぐ紅葉の波を漕ぎゆく… 帝釈峡は、庄原市東城町と神石郡神石高原町との境界を流れている帝釈川に沿う峡谷。世界の三大名橋の一つ雄橋は、石灰岩の天然橋として有名。一帯の溪谷は大正１２年（１９２３）国の名勝に指定されている。 歌集の序文に「愛好措かない帝釈の溪の景色を、未だ知らない人達に告げることが出来、また、その溪に遊んで感興を同うして呉れる人があったら満足この上ない」と書いている。 歌風は素純、清澄で、自然詠にすぐれている。 |
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