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千鳥
(ちどり)
鈴木三重吉は、明治15年(1882)広島市に生まれた。のち、旧東京帝国大学英文科に入学、夏目漱石の講義を受講、明治38年(1905)1年間休学、広島の家や広島湾内の島で静養した。翌年3月、広島の家で処女作「千鳥」を書き、漱石に送った。漱石は、「千鳥」を「僕名作を得たり之をホトトギスへ献上せんとす」と推薦して、その辞とともに5月「ホトトギス」に掲載された。
三重吉は「処女作を出すまでの私」の中で、「私の『千鳥』は別に作物を世に出しいたいとか、小説といふものを書くとかいふ気で書いたのではなくて、ただ私の一個の私信と同じ意味で、夏目先生にさし上げたのである。『千鳥』一編の筋も、部分々々の事實も殆ど全然空想の産物であったけれども、あの中の自然の描寫なぞの切片は先生には珍しいに相違ないと思って、手紙をさし上げるやうなつもりでお上げしたのであった」と記している。
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