レポート : ひなまつりで町が元気に!(上下町)
歴史的町並みをキャンパスに「上下ひなまつり」の開催
〜伝統的な文化行事で町の活性化。果たしてその効果は?〜
上下は、かつて幕府の天領として栄え、備後・備中5万石を支配する代官所が置かれていました。当時を偲ばせる白壁やなまこ壁が残る町並みで、平成19年2月17日(土)〜4月1日(日)まで「上下ひなまつり」が開催されました。今年で2回目となった「上下ひなまつり」。その成果は?上下ひなまつり実行委員会のメンバーにお話を伺って来ました。
□ 観光客が育ててくれた □
かつて天領として栄えた上下の商店街もさびれ、店を閉める家も出てくるなか、上下に賑いを取り戻そうと始まったのが「上下ひなまつり」。最初は「そんなことをしても同じじゃないか」と言う人も多かったそうですが、「先ずはやってみよう」ということで、予算も何もないところからスタートしました。皆がある物を出し合い、それぞれできることをやった一年目。ところが、予想外の反響があり、観光客も増えました。二年目となった今年は、昨年の2〜3倍の来訪者、「どこからこんなに人が!?」とうれしい悲鳴があがったそうです。
観光客が増えるのを目の当たりにし、最初は疑問に思っていた人たちも動き出しました。お土産を置く店、店内の限られたスペースに工夫して雛人形を飾る商店、イベントに合わせてコンサートを開いた大正琴のサークル、家の障子を開けて練習した琴のお師匠さん、創作雛を作って提供する人、俳句や川柳の作品を商店街に飾る文化サークルなど、地域の人たちが自分のできることを全部やりました。「来てくださった人に『楽しかった』と言ってもらうと、次はもっと楽しんでいただけるようにさらにおもてなしを考えたいという気持ちになります」と、実行委員会のメンバー。自分の暮らす町のよさは、住んでいてもなかなかわからないようです。外から来た人たちに、「いい町ですね」と言われることで上下のよさを再認識し、「もっといい町にしたい。頑張ろう」という気持ちが生まれてくるということでした。メンバーの「上下に自信、誇り、愛情を持てるようになりました」という言葉が印象的でした。
□ みんな元気になった! □
このイベントの効果について尋ねたところ、「みんなが元気で、前向きになりました」という答えが返ってきました。例えば、手作りのお雛様を制作して販売した「手作りおばあちゃんの会」。予想以上に好調な売れ行きで、売り上げ金を元手にお食事会や温泉旅行を実施したそうです。どの団体も考えていた以上の反響に喜び、「次は何をやろうか、次も何か考えよう」と、前向きに、楽しんでイベントを行えるようになりました。「どうせやっても無駄では」といった発言が少なくなってきたということです。お店を閉めようと思っていた70代の女性。町が賑うのを見て、もうちょっと頑張ってみようと考えているそうです。
□ 目標は新規雇用や産業の創出 □
上下もまた、高齢化という地域課題を抱えています。大学進学等で故郷を離れると、再び戻って来る若者は少ないそうです。上下の歴史・文化を大切にし、住む人が故郷に誇りを持てるようなイベントをずっと続けて、町に賑いを取り戻す。そうすることで、新しい雇用や産業も生まれ、町を出た人も戻ってくるし、新しく人も入ってくる。そこまで継続し、頑張っていくことが目標ということでした。
□ 町の人との交流が魅力(レポーターの感想) □
現在、広島県内の各地で町の魅力を活かしたひなまつり事業が実施されるようになってきています。それでは、「上下ひなまつり」の魅力は? 何と言っても、白壁の残る美しい町並みと伝統的なお雛様の風情あるマッチングだと思います。でも、それ以上に心に残ったのは、町の人たちとの触れ合いでした。初めて上下の街路を歩く私に、「こんにちは」と声をかけてくれたり、店内に足を踏み入れれば、店に飾られた雛人形の説明を丁寧にしてくれます。事前申込をすれば、地元ボランティアによるガイドも実施しています。町の人たちのそれぞれに心のこもった対応は、訪れた私を暖かい気持ちにしてくれました。
子どもの頃よく遊びに行った祖父母の家の佇まいに似た家々、優雅で、幸福な気持ちにしてくれる雛人形の数々、そして上下の人たちの心のこもったおもてなし、忙しい日々の生活の中で忘れていた大切なものを思い出させてくれる旅でした(KK)。
※ 上下では、上下歳時記として、ひなまつり以外の事業も実施しています。
詳しく は下記ホームページをご覧ください。
府中市観光協会上下支部 http://www.fuchu.or.jp/~joge/