レポート : 文化芸術によるまちの活性化(みよし国際平和美術館)
三次に妖怪来る!
〜郷土が誇る妖怪物語でまちの活性化〜
広島県三次市のみよし本通り商店街にある築150年以上という町家を活用した「みよし国際平和美術館」。
館長である楠さんの持家をギャラリーにし、世界中から贈られた書・絵画・民俗衣裳・人形などが3千点近く展示されています。それらは、クリスチャンであり、画家でもある楠さんが海外の障害者との交流、キリスト者平和使節団としての訪欧、天津美術学院客員教授などの活動を通じて知り合った世界各国の友人から贈られたものです(観覧無料)。
この「みよし国際平和美術館」が、地元、みよし本通り商店街の活性化に一役買おうと、郷土に伝わる日本一長い妖怪物語「稲生武太夫物怪録」を基に紙芝居やパネルを制作しました。
■街角紙芝居「珍・新 稲生武太夫」■
「稲生武太夫物怪録」は、江戸時代に現在の三次市を舞台に創作されました。主人公である平太郎(後に武太夫と改名)が、30日間にわたって屋敷に出現し続けた妖怪たちをものともせず、ことごとく退けたという内容です。
楠さんが、この物語を基に18枚の原画を描きました。「郷土が誇る妖怪物語を、子供たちが怖がり、見るのを嫌がるような絵ではなく、喜んで見てくれるような絵にして伝えたかった」と楠さん。場面場面の特徴がはっきりと打ち出され、楽しく、しかも芸術的な作品に仕上がっています。
この紙芝居は、平成19年4月29日に開催されるみよし本通り商店街のイベント「れとりーとふぇすてぃばる」において上演されます。上演場所は「みよし国際平和美術館」の前、時間は15:00頃を予定しています。その他、依頼があれば、地域施設等への出前紙芝居も行いたいということでした。
※出前紙芝居のお申込は、「みよし国際平和美術館」0824−62−2665まで
■軒下美術展!?■
「稲生武太夫物怪録」を基にした紙芝居の上演のほかに、「三次に妖怪来る!一緒に楽しく妖怪祭りをしませんか」というテーマで描かれた作品の展示が行われます。これらの作品には、中国やヨーロッパ諸国など世界各国の個性溢れる妖怪たちが描かれています。一方、よく見るとみよし本通りに実在するお店が描かれており、国際性と地域性がユニークに同居した作品群となっています。これらの作品は全長20メートルとなるパネルに装丁され、「れとりーとふぇすてぃばる」開催時に、「みよし国際平和美術館」周辺の町家の軒下に展示されます。パネルのほかにも、同美術館のメンバーや楠さんの絵・オブジェなども一緒に展示される予定になっており、みよし本通り商店街に妖怪をテーマとした楽しいアートスポットが登場することとなりそうです。
■文化芸術によるまちづくり■
昨今、日本各地で、文化芸術によるまちづくりということがしきりに言われるようになってきました。今回ご紹介した「みよし国際平和美術館」の取組は、昨年度三次市で「世界妖怪会議」が開催され、物怪物語を活用した地域活性化の気運が三次市の中で盛り上がってきていることを前提としたものです。紙芝居の原画やパネルに展示された作品群は、創作者の自由な精神を反映した個性的で、芸術性の高いものとなっています。これら個性溢れる作品の路上での展示や街角紙芝居の上演は、商店街の活性化を目的としたイベントの話題づくりや賑いづくりに必ずや貢献するものと思われます。
しかし、文化活動者によるまちづくりへの取組は、しばしば“継続”という課題に直面するようです。いかに地元と根深いところで繋がれるか、いかに地域が文化活動者のクリエイティブな活動に協力・支援していけるかが今後の発展の重要なカギとなっていきそうです(KK)。
※「れとりーとふぇすてぃばる」についてお知りになりたい方は,下記ホームページをご覧ください。
http://www.mhst.jp/event.htm